[副校長] 贈り物

『 贈り物 』

先日学校に小包が一つ届いた。差出人は本校3年に在学中の男子生徒。箱を開けてみるとマスク3箱が手紙を添えて入っていた。手紙には手書きで「先生方や生徒など、困っている人に配布してください。」「我が校の生徒に誰一人として感染者が出ないよう・・・また元気で明るい学校生活が送れるよう切に願います。」の文字。

普段多くを語らない生徒である。時には周囲から誤解される事もあったかも知れない。それでも学校が好きで、放課後には一人で教室や廊下を清掃してくれている姿を何度も見かけた。そのお礼に僅かばかりのチョコを手渡した時には、こちらが恐縮するほどのお礼の言葉と笑顔を返してくれた。純朴にして温厚、他者に手を差し伸べる事が出来る若者。きっとマスクの入手が困難な昨今の社会状況を見て、同窓の生徒や教職員にも想いを馳せてくれたに違いない。

人はピンチの時に、その人が持つ人間性や品位が出るもの。新型コロナウイルスで世界中が危機に晒されている今、「自分さえ」「われ先に」という思いや、誰かを責め批判ばかりする行動は厳に慎みたい。それよりも先ず、一人一人が今自分に出来ることを冷静かつ協力的に行いたい。そこに彼のような「他者に対する想像力」のスパイスを降りかけたらきっと、人も街も今回の危機を乗り越えて行けるに違いない。

新型コロナウイルスとの闘いで、ややもすると利己的・排他的になりがちな世の中。

このウイルスに心まで蝕まわれてしまっては、それこそ人類の負けなのである。

 

彼の贈ってくれた優しい思いと純白なマスクが、そのことを教えてくれた。

 

 

2020.410

 

霞ヶ関高等学校

副校長 伊坪 誠

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