[副校長] 第三者の目

第三者の目
このひと月の間、世間の視線は二人の人物に注がれた。一人は政治資金を私的流用した都知事。彼は「第三者の厳しい目でご判断いただく」とし、数名の弁護士にそれを委ねた。

そしてもう一人は、世界最多安打記録を達成したイチロー選手である。彼はメジャーリーグのシーズン最多安打記録を更新した2004年に「自分は第三者を意識した生き方はしたくありません。自分が納得した生き方をしたいです。」とファンを前に語った。それから今日まで、彼は尊敬の眼差しを浴び続けている。共に第三者の目を意識してこなかった二人。その結果として得た第三者の目の評価の違いがこれ程大きかったのは何故なのだろうか。その答えとなるのが「第一の目」である。

第一の目、それは自分自身を見詰める眼差し。第一の目が客観的で厳しいものであるなら、第三者の目など気にする必要はあるまい。第三者の目を常に気にして自分を見失うでもなく、過信し我が物顔に振る舞った結果信頼を失うでもない。自らの眼差しに見つめられながら、しっかりと成長し人生を歩む。それこそが、真の自由を手に出来る人なのだ。

「自分のやっていることは、理由があることでなくてはいけないと思っているし、自分の行動の意味を、必ず説明できる自信もあります。」「どういう自分であるかということを見てもらって、応援するかどうかは、見る側が決めることです。」もイチロー選手の言葉。ありのままの自分の強さとは、やはり第三の目以上に厳しい第一の目から生まれるに違いない。

政済界や教育現場でも、そんな目力を備えた人の出現を願いたい。そして他者に第三の目を向けて生きてゆく私たちも、その境地に少しでも近付きたいものである。

「苦しいことの先に、あたらしいなにかが見つかると信じています。」byイチロー

 

2016.6.20  伊坪 誠

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