[副校長] 可愛い子には…
可愛い子には…
子育ての経験の中で、我が子が親の手を離れて行く事を実感した最初の出来事は、自転車が乗れるようになった時である。練習をはじめた時は親に自転車を押してもらい、おっかなびっくりだった子が、ひとたび乗れるようになると、親元からどんどんと離れて見えない程遠くに行ってしまった。乗れるようになるまで何度もおこなった練習で出来た子供の傷と涙の数は、親としては辛いものであった。しかし、自転車に乗れるようになった瞬間のあの笑顔は、今迄の苦労を全て忘れさせてくれた。子どもと云うものは、かようにして成長し独立して行くのだと言うことをしみじみと学べた機会であった。
自転車が乗れるようになった子供たちは、やがて進学・就職・結婚という人生の節目を経ながら、物理的にも精神的にも親元から遠く離れてゆく。もう自転車の乗り方を教えた時のような親が手とり足取り教えなくとも、ちゃんと自分で考え前進して行くのだ。しかし、時には親が見ていてハラハラすることがある。苦しむ我が子を見て、救いの手を出したくなったり、守りたくなったりもする。そんな時は、思い出して欲しい。転んで、怪我して、涙しながら自転車の練習をしている我が子に「もう練習なんてやめなさい」と言って止めさせてしまったら、乗れた時のあの笑顔は見る事が出来なかったはずである。
人間関係や進路の悩み、転学の悩み等々。今、子供たちが直面している様々な問題でも同じこと。転ばないように、怪我をしないように、悲しい思いをさせないようにと考える「親心」は胸の内にぐっと収めて、その問題に我が子がどう向き合い、結果としてどう成長し大人への階段を上って行くのかを見守りたい。
「あなたなら大丈夫、きっと笑顔になれるから」
転んで 怪我して 立ち上がる
子どもと云うものは、かようにして成長し独立して行くのである。
2016.5.24 副校長 伊坪 誠