[副校長] Vote(投票)

Vote(投票)
先日イギリスでおこなわれたEU離脱の是非を問う国民投票。僅差で離脱派が上回る結果となった。EUに加盟している事で、移民が大量に流入しイギリス国民の職が奪われている。EU主導のルールや莫大な負担金を我が大英帝国(イギリス)が押し付けられている。というのが高齢者とイングランドやウエールズの労働者を中心とした人々の不満であった。それらの不満を一部の政治家が「今こそEUを離脱してイギリスの主権を取り戻し、移民たちから職を取り返そうと」と訴え、EU残留を主張していたキャメロン首相と対峙した。出た結果に対して、世界経済の先行きが一挙に不透明になった。イギリス国内でも経済不安に加え、自治州の独立問題にまで波及し未来の雲行きは怪しい。

世界大戦という過ちを二度起こしたヨーロッパは、政治的にも経済的にも結びつきを強めることが平和と発展につながる事を身を持って学び、長い時間と困難を乗り越えEUの設立を実現させた。その理念は「多様性の中の統合」。民族も国境も超えた自由と平等な人と人との結びつきである。今回の投票で離脱を主張した人々は、これにNOを投じた。そんなものは無意味であるとばかりに、他国や他民族と共にEUの歴史を積み上げてゆく作業を放棄した。それはまるで自国をウイスキー樽に押し込める行為に見えてならない。「自分第一主義」のラベルが貼られた樽の中では、不寛容さが熟成される。

世界を見回すと、アメリカの大統領選挙戦でも、扇動的発言を声高に唱えている候補者が人気を集めている。寛容な世界から不寛容な時代へ。歴史の針は1920年や30年代の世界に戻りかけているような気がしてならない。民主主義とは積み上げるには長い時間がかかるが、薄氷のように脆いものなのだ。その脆さを支えるのが、票を投じる有権者の知識教養と倫理観。そして思慮深い行動であるということを、今と云う時代を生きている我々は学ばなくてはならない。

日本でも、18歳以上の高校生が投票出来るようになって最初の選挙が間もなくおこなわれる。「知識教養と倫理観、そして思慮深い行動」それがそろっての清き一票なのだ。目先の利益や一時の感情で未来に汚点を残してはならない。あなたのしっかりとした願いと行動で、これからの時代と世界を他者と共に積み上げて行って欲しい。

もう不寛容な世界に戻るのだけは御免である。

(今回の話の内容が良く分からない本校生徒は、私と話しましょう。  笑 )

 

2016.6.28  副校長  伊坪 誠

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