[副校長] 令和二年度、卒業していく皆さんへ

令和二年度、卒業して行く皆さんへ

 

3年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

3年前の春、一般・特別両コース合わせて生徒26名で始まったこの学年も、いまでは80名を超える仲間となりました。皆さん、本校での高校生活はいかがでしたか?この問いかけに対する皆さんの答えを聞く前に、私から先に皆さんの期待に十分に応える事が出来なかったことをお詫びいたします。この自責の念とも言える思いは、私が教師になった時からずっと、卒業生に対し抱いてしまう思いでもあります。おそらく全国の高校で多くの先生方がこの時期に同じような思いを抱いている筈です。なぜなら、新生活の期待を胸に入学してくる生徒・保護者達、その全ての期待に沿い完璧に応える教育を成し遂げている高校はおそらく何処にも無いからです。本校に入学した皆さんに対しては、先生方をはじめ事務室のスタッフ、PTAの皆さん、その一人一人が生徒の期待に応えるべく色々な場所で様々な努力をしてきました。しかしそれでも皆さんをガッカリさせてしまったり、心を傷つけてしまう結果となった時があったのではないかと思います。その様な思いをさせてしまったこと、本当に申し訳なく思います。また、本校に入学した全ての生徒をこの卒業式の会場に立たせてあげられなかった事も、残念でなりません。

世の中に「反面教師」という言葉があります。悪い面の見本で、それを見ると「ああはならないようにしよう」と自己の反省材料となる人や物事のことです。卒業をしていく皆さんに今、先生が出来る事は、我々を反面教師としてこれからの成長に役立ててもらいたいと願う事ぐらいしかありません。

そんな反面教師の自分が言うのも僭越ですが、皆さんがこれから歩んでいく社会には、たくさんの不合理や不条理、偏見・差別があることは否めません。それら一つひとつを無くしていくのは行政だけでなく、社会人として生きる私たち一人一人の使命でもあります。卒業する皆さんは、どうか怯むことなく自分の出来る方法でその解消に貢献し続けて下さい。その一方で、人生の何処かで、時にはそのような差別・偏見・不条理に押しつぶされそうになることもあるでしょう。そんな時は、反面教師のこの高校で生活した日々の事を思い出してみてはどうでしょう。高校生活の中、納得行かない事や自分の思うようにならないことが多々あったと思います。中には挫折して学校を辞めてしまった人も。でも皆さんは、それを乗り越えて高校を卒業することが出来た。それは何故ですか?きっと嫌なことや難しいと感じた壁を乗り越える勇気だったり、見方を変える事によって自分のプラスに変換する知恵だったり、転んでも立ち上がって何度でもチャレンジする行動力があったからではないですか?そして、君を励まし笑顔にさせてくれた友達や恋人、家族がいた事も思い出してみて下さい。さらには、陰でそっと支えてくれた人達の存在も。

高校の三年間は、子供から大人へと成長する時期。卒業生の皆さんは、この大切な時間の中で自分が大きく成長を果たす事が出来たと思いませんか。それとも、実感出来る程の成長は無かったですか。皆さんは、本校入学時にそれぞれ約束を立てて入学したことを覚えていますか?「今の自分を、より良く変えるため」、「出来なかった事が出来るようになり、社会に巣立つため」「将来、この転校が自分にとって良かったと思えるものにする!」そのための本校入学だったのではないですか? その約束をしっかり覚えていた生徒なら、きっと大きく成長し卒業式を迎えていることと思います。同時に節目節目で自分自身に約束や目標をたてて生きていくことの大切さを、理解していただけたのではないかと思います。

 

だいぶ長い文章になってきました。話したいことはまだまだ尽きませんが、そろそろ筆を置きますね。高校生活も卒業式も、そして人生も、時間には限りがありますから…。

 

人生の節目のひとつが高校の卒業。その節目に今立っている皆さんには、ここで新たな約束をして頂けたらと思います。高校の卒業式は「支配からの卒業」でも「勉強からの卒業」でもありません。「子供時代からの卒業」だと意識してください。それを意識した上で、高校時代の自分自身を反面教師にして、大人としての新たな約束・目標を立てて欲しい。事あるごとに不平不満を言い連ね、誰かを悪者にして徒党を組むなんて子供じみた卑怯な真似はせず、胸を張って人生を歩んでください。そんな君達なら、もう母校の事など忘れてしまって構いません。元気で活躍しているのならば、懐かしさに甘え母校を訪ねて来ることなんてしてはいけません。

でもね…。もし、人生のどこかで心が折れそうな程の辛いこや困った事があった時、社会の冷たい風で凍えてしまいそうになった時には、本校の事や先生方の事を思い出して訪ねて来てください。

その時は半面教師の先生方が、温かな珈琲でも入れながら、自らの人生での反面教師ぶりをたっぷり話して聞かせましょう。

 

3月14日、いよいよお別れです。

卒業する皆さんのこれからに、幸多いことを願っています。

 

 

令和3年3月12日

 

霞ヶ関高等学校

副校長 伊坪 誠

 

 

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