[副校長] ワクチン

「ワクチン」

 「一日の感染者数としては過去最多です」。今年この言葉を報道番組で何度聞いたことだろう。はじめのうちは感染者やその家族、感染者の治療にあたる医療従事者たちの苦しみや苦労が、数字を通して想像出来た。しかし毎日聞いているうちに段々と慣れっこになって、感染者数は単なる数字にしか見えなくなっている自分がいることに、はっとさせられた。

感染者数、人との距離、会食の人数・・・。思えば数字に追い立てられ、縛られるような一年であった。同時に数字には表れないものにも想いを巡らせることの大切さに気づけた一年でもあった。それは、目に見えないものを見つめ、育て、目に見えるものに繋げていく教育という営みに欠かせない視点でもある。人が人として、人と共に生きていくのに不可欠な思考だ。コロナ禍の世の中、ウイルスに心まで蝕まれぬよう生きて行こう。むしろ禍を人としての成長のエネルギーに変えて行きたい。

コロナワクチンが日本中に行き渡るのは、もう少し先の様である。その前にコロナ禍に心が麻痺させられぬよう、心にワクチンを打ちたい。そのワクチンは、一人一人の心の中で作られる。

来る2021年、読者の皆さんの心も体も健康・健全でいることを切に願っています。

2020.12.24

霞ヶ関高等学校

副校長 伊坪 誠

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