[副校長] ホームタウン

ホームタウン
引越しの風景を目にする事の多くなる季節となった。この時期になると毎年ニュースサイトで住みたい街ランキングが紹介される。どの街も買い物や交通やの便が良く、いつかは自分もこんな街で生活出来たならと妄想をはじめてみたりもする。

私たちの周囲の市町村はどこも街づくりに積極的だ。道路を整備し沿道には大型商業施設を誘致する。駅前にはロータリーを設け、マンションが立ち並び、コじゃれた街の完成である。しかし全ての街が、その後も順調に繁栄するとは限らない。周囲に新たな街が誕生すると、人の流れが変わってしまう事だってある。栄える街と寂れる街、何処かが違い何かが足りないのである。

私たちの学校のある川越市は人口が増え続けており、平成27年には35万人に達した。街づくりのセオリーに漏れず、商業施設も多い。鉄道も東武鉄道・西武鉄道の他、JRのが乗り入れ都心へのアクセスも良い。しかし、川越の強みは小江戸と呼ばれる歴史と文化を持つことにある。地元の人々が、その強みに気づき磨きをかけた事で観光客も大幅に増えている。近隣の街が今後どんなに頑張っても、歴史と文化に関しては川越のそれには追いつけない。歴史と文化こそが他の街にはない魅力につながっているのである。

人づくりも街づくりと似ている。人は皆、多かれ少なかれ目標を持ち生きている。若い君たちなら「美しくなりたい」「人より良い暮らしがしたい」と云ったところか。しかしその目標の一つに「しかりとした自分の歴史や文化を積み重ねて行きたい」というのを入れてみてはどうだろうか。人としての文化とは教養・立ち振る舞い・物の考え方といったもの。歴史とはそれらに磨きをかけながら、日々の暮らしや仕事を積み上げていくこと。地味で面白くない道程に見えるかも知れないが、それこそがあなた自身の魅力と幸せな暮らしの礎になるはずである。

街なら引越しも可能だ。しかし自分という人づくりは、自身で一から築きあげるしかない。自分というホームタウンが素晴らしいものになるか否か。全ては自身の肩に掛かっている。

 

2017.3.11  副校長  伊坪 誠

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