[副校長] 万物の根源

万物の根源
かなり長い事、この欄の投稿を休んだ。その間にアメリカ大統領選挙の衝撃をはじめ、世界情勢から身の回りに至るまで、考えさせられる事が多く、何を書くべきか思案しているうちに時が過ぎて行ってしまった。いったい人の世は、この先どうなってしまうのだろう。

古代ギリシャの知識人たちは、万物の根源は何かということを真剣に研究した。或る者は水・或る者は火に、その答えを求めた。数学者であるピタゴラスは「万物の根源は数である」と主張した。彼の主張に全面的に賛同する者は現代ではいないだろう。しかし、音階や図法など人間が生み出すものに限れば、確かに数学的秩序によって構成されているものが多い。だとしたら、人の心や行動も数学で答えが導かれるかも知れぬ。

過激化する人々、不寛容な社会、善悪二元論的な思想…。いま世界や私たちの日常が、一直線にある一つの方向に向かい始めてはいないだろうか?それはまるで、引き算だけの世界、掛け算だけの時代のようである。世界のあちこちで繰り広げられている現代人の行動をピタゴラス先生が見たらなんと言うだろう?「足したり引いたり、掛けたり割ったりしながら、明確な答えには辿りつかなくとも、より良い解を導き出す知恵を出し合い続ければ良いではないか。 それこそが、この世界のあるべき姿じゃよ。」

数千年前の偉人と対話していた秋だった。

来年は、どんな世界と出逢え、誰と対話できるのだろう。楽しみである。

 

2016.12.7  副校長  伊坪 誠

前の記事

[副校長] 旅の途中

次の記事

[副校長] 入学試験