[副校長] 新年度当初の校内の様子

『新年度当初の校内の様子』

 

空気感という言葉がある。人物や空間そのものが直接的に表現していなくても、振る舞いや様子などから間接的に他者が感じ取る雰囲気のこととでも説明すれば良いだろうか。その空気感。今年度の本校は、昨年度までのものとは異なったと感じている。

最初に感じたのが始業式。ソーシャルディスタンスがとられた会場に並べられた生徒分の椅子。本校では席の指定は無い。来た者から順に思い思いの場所に着席する。当然欠席する者がいるので、前の方が空席となってしまうのが常である。しかし今年は開式前から既に前方席が埋まっている。見れば後方席に至るまで空席は2,3席程しか見あたらない。年度初めの生徒数がここ数年間で最高の人数ならば、出席率も最高である。その生徒達の式での態度がまた素晴らしかった。号令に瞬時に反応し、集中が途切れないのだ。それは高校の始業式というよりも、まるで周到に練習を重ねて挙行された卒業式の様である。

後日行われた身体計測や内科検診でも、GW後の授業中や休み時間でも、始業式に感じた空気感が校内に漂い続けている。筆者が感じとっているその空気感を一言で形容するならば、「心地良い緊張感と清潔感」であろう。学校における空気感は数人だけがいくら頑張っても生まれない。在籍する大多数の生徒の態度、服装、身のこなし全てが学校ごとの空気感を生み出しているのだ。手前味噌だが、本校が良い学校に着実に成長している実感と、その学校で教師として生徒と歩める充実感を、授業中の廊下に漏れ聞こえて来る穏やかな音色の中で感じている。しかしどんなに長い歳月を積み重ねて生み出された空気感でも、守り育てる努力を怠れば一瞬で消えてしまう事も肝に銘じなければならない。

多くの学校にあるような校則で、生徒の行動を規制や強制しない本校がここまで成長出来たのは、在校生・卒業生の意識の高さと保護者・先生方の日々の取り組みの賜である。そして本校の教育方針を理解し生徒を本校に紹介してくれる近隣の中学校や高等学校の先生方のお陰であると痛感している。今感じている空気感が今後も続いてくれたなら、この空気感が本校の伝統と言える迄になったなら、数年前に「日本一の通信制高校を共に作ろう!」と始まった改革が一応の実りを迎えられる筈である。その日が来るまで、気を引き締めながら歩み続けよう。

 

2021.5.8

霞ヶ関高等学校

副校長 伊坪 誠

 

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